予防接種を受けさせないリスクをもう一度考えてみましょう
こんにちは、有明こどもクリニック豊洲院院長の「のりちゃん先生」こと、村上典子です。
子育てをしていると、予防接種について悩むことがあると思います。ネットや周りの情報で副反応について不安に感じたり、接種をためらう気持ちもわかります。
しかし、予防接種を受けさせないことで、お子さんが背負うリスクについてもう一度一緒に考えてみましょう。
予防接種の役割とは?
予防接種は、重篤な感染症からお子さんを守るための重要な手段です。人間は、集団生活をしているので常に感染症にかかりやすく、命に関わる場合があります。とくに小さなお子さんは免疫機能が成熟していないために重症化しやすいです。予防接種を受けることで、特定の病気に対する免疫を身につけ、感染を防ぐことができます。
現代では、ワクチンのおかげで麻疹やポリオ、百日咳などの重篤な病気が劇的に減少しました。これらの病気は、かつて多くの子どもたちが命を落としたり、重い後遺症を残したりする原因となっていました。ワクチンが普及したからこそ、今の私たちはこれらの病気を目にする機会が少なくなっています。
予防接種を受けないことで背負うリスク
予防接種に不信感を抱く親御さんもいらっしゃるかと思います。しかし、予防接種を受けさせないことは、重篤な病気にかかるリスクを回避する手段を自ら拒否することだと理解していただきたいです。以下に、予防接種を受けないことでお子さんが背負うリスクをいくつか挙げてみます。
・感染症にかかるリスクが高まる
予防接種を受けないと、お子さんは麻疹のように非常に感染力が強くかつ特効薬がない感染症にかかるリスクが高まります。麻疹は空気感染なので、ワクチンを受けていない場合、同じ空間に麻疹を持っている方がいるだけでほぼ確実に感染すると言われています。
・重症化や合併症のリスクがある
ワクチンで予防できる病気の中には、重症化したり命に関わる合併症を引き起こすものもあります。例えば、インフルエンザが重症化すると肺炎や脳炎を引き起こすことがあります。また、百日咳は小さな赤ちゃんにとっては非常に危険で、呼吸困難や脳へのダメージを引き起こすリスクがあります。
・周囲の子どもたちや家族にも影響が出る
お子さんがワクチンを受けないことで、他の子どもや家族、特に高齢者や免疫力が低下している人に病気をうつす可能性があります。集団免疫という考え方に基づき、多くの人が予防接種を受けることで、社会全体の感染リスクを下げることができます。予防接種を受けない人が増えると、集団免疫が弱まり、感染症の再流行が起こる可能性があります。
予防接種に対する不安について
予防接種に対して不安を感じる親御さんの中には、副反応が心配だという声もあります。確かに、ワクチンにはごくまれに軽い副反応(発熱や接種部位の腫れ、倦怠感など)が出ることがありますが、これは体が免疫を作るための自然な反応です。ほとんどの場合、数日で症状は軽快します。
・病気にかかるリスクとの比較
重篤な副反応のリスクは、実際の病気にかかった場合のリスクに比べると、はるかに低いです。病気にかかって重症化したり、後遺症が残るリスクを避けるために、予防接種を受けることの方がはるかに大きなメリットがあります。
パパママへのお願い:子どもを守るための選択
親として、子どもに何がベストかを考えるのは当然のことだと思います。多様性を認めるという社会の風潮も理解しています。しかしお子さんの予防接種に対しては小児科専門医としてお伝えしたいことがあるのです。私達小児科専門医は子どもの代弁者です。パパママご自身が自分の考えによって自分のワクチンをうたないのは自由です。
しかし、お子さんはパパやママとは別の、人権を持たれた立派な尊重すべき個人です。お子さんの人生はパパやママが一生責任を負えるものではありません。どのような未来が待っているのか、誰にも決められないのです。ワクチンを接種していないがためにお子さんが将来妊娠中・もしくはパートナーが妊娠中に風疹にかかってしまったら、胎児が先天性風疹症候群になるリスクが跳ね上がります。お子さんの次の世代にも責任が発生してしまうのです。この事実を御存知ですか?
予防接種を受けさせないことによって生じるリスクは、非常に大きいです。私たち小児科医は、子どもたちが健やかに成長するために、ワクチンを安全に受けることを強く推奨しています。
ワクチンに関する情報は、ネット上に溢れています。信頼できる医療機関や専門家の情報に基づいて、冷静に判断することが大切です。ワクチンに対する不安や疑問があれば、遠慮なく医師に相談してください。専門家として、皆さんの不安を一緒に解消するためにサポートします。
次回も役立つ情報をお届けしますのでお楽しみに!