子どもの鉄欠乏性貧血について

こんにちは、有明こどもクリニック豊洲院院長の「のりちゃん先生」こと、村上典子です。

みなさん、朝晩冷え込み、日もだいぶ短くなってきましたね。食欲の秋!!くだものやサンマ、チョコレート!!!私の好きなものが美味しい季節になってきました。にもかかわらす、食欲が出ないよーと外来にやってくる子がいます。そんなお子さんで心配なのは、貧血です。

鉄欠乏性貧血は、子どもにも見られる最も一般的な貧血の一つです。鉄分が不足すると、体が必要とする酸素がうまく運ばれなくなり、さまざまな不調を引き起こすことがあります。今回は、鉄欠乏性貧血の症状と食事療法について、詳しくご紹介します。

鉄欠乏性貧血とは?

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄分が不足することで、赤血球中のヘモグロビン(酸素を運ぶ成分)が減少し、酸素が体全体に行き渡らなくなる状態です。鉄分はヘモグロビンの生成に必要不可欠で、特に成長期の子どもたちには多くの鉄が必要です。

成長期に多い貧血
子どもや思春期の若者、特に女の子に多く見られるのが鉄欠乏性貧血です。成長に伴い血液の量が増えるため、体が鉄分を多く必要とするのです。

鉄欠乏性貧血の主な症状

鉄欠乏性貧血になると、体が酸素不足になり、以下のような症状が見られることがあります。貧血はゆっくりと進行するため、親が気づきにくいこともありますが、次のような症状に注意しましょう。

疲れやすくなる
鉄分が不足すると、体に十分な酸素が供給されず、疲労感を感じやすくなります。子どもがすぐに疲れてしまったり、元気がないと感じる場合、貧血の可能性があるかもしれません。

顔色が悪い
貧血になると顔色が青白くなり、肌にツヤがなくなることがあります。特に唇や爪の色が青白く見える場合は、鉄欠乏性貧血のサインかもしれません。

食欲が低下する
鉄欠乏性貧血の子どもは、食欲が減少することがあります。栄養を十分に摂れないと、ますます鉄不足が進行してしまうため、食欲の低下は見逃さずに対処することが大切です。

集中力が低下し、イライラしやすくなる
貧血によって脳に酸素が十分に届かないと、集中力が低下したり、気持ちが不安定になることがあります。子どもが学習や遊びに集中できなかったり、イライラしている様子が見られたら、貧血の可能性を考えてみましょう。

鉄欠乏性貧血の食事療法

鉄欠乏性貧血の改善には、食事からの鉄分摂取が基本です。鉄にはヘム鉄非ヘム鉄の2種類があり、動物性食品に含まれるヘム鉄は吸収率が高く、効果的に摂取することができます。

鉄分を多く含む食品

◆レバー(鶏、豚、牛)
特に鶏や豚のレバーは鉄分が豊富で、子どもに必要なビタミンB12も含まれています。

◆赤身の肉(牛、ラム)
ヘム鉄が豊富に含まれており、少量でも効果的に鉄分を摂取できます。

◆青魚(いわし、さば)
鉄分が多いだけでなく、DHAやEPAも含まれ、健康に良い影響を与えます。

◆ほうれん草や小松菜
非ヘム鉄ですが、野菜の中では鉄分が豊富で、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が高まります。

吸収を助ける栄養素を一緒に摂る
鉄の吸収を助けるビタミンCが含まれる食品(オレンジ、イチゴ、ブロッコリーなど)を一緒に摂ると、鉄分が体内で効率よく吸収されます。ビタミンB12や葉酸も赤血球の生成を助けるため、バランスよく摂取することが大切です。

鉄分が不足しがちな食品
お菓子やジュースの摂り過ぎは、鉄の吸収を阻害したり、食事量が減って鉄分が不足しやすくなります。鉄欠乏性貧血の予防のためにも、適度な食事バランスを意識しましょう。

食事療法の工夫

鉄分を含む食品が少し苦手な子どももいるかもしれません。そんなときは、日常の食事に少し工夫を加えることで、鉄分を摂取しやすくなります。

食べやすいメニューにアレンジ
レバーや青魚が苦手なお子さんには、ミートソースやハンバーグに混ぜることで食べやすくする工夫が効果的です。鉄分豊富なほうれん草や小松菜も、スムージーや卵焼きに入れると食べやすくなります

吸収率を高める食べ合わせを意識する
ほうれん草や小松菜などの非ヘム鉄の野菜には、ビタミンC豊富な果物を添えると吸収が良くなります。例えば、ほうれん草サラダにオレンジを添えたり、青魚と野菜の煮物にレモンを絞ってかけるなどの工夫をしてみましょう。

医師のサポートを受けながら進めることも重要

食事療法で改善が見られない場合や、貧血が進行している場合は、医師に相談して鉄剤の補充を検討することも大切です。特に、食事での改善が難しい時期や、体の成長が急激に進む思春期などは、食事療法と鉄剤を組み合わせて行う場合があります。

定期的な検査で状況を確認
鉄欠乏性貧血が疑われる場合は、定期的に血液検査を行い、鉄分の値をチェックすることが重要です。適切なタイミングでフォローアップし、子どもの体調を見守りましょう。

鉄欠乏性貧血は、子どもの体や心の健康に大きく影響することがあります。特に成長期の子どもにとって、鉄分は欠かせない栄養素です。食事を通じてしっかりと鉄分を摂取し、健康な体づくりをサポートしてあげましょう。何か気になることがあれば、クリニックでの相談もぜひ活用してくださいね。

次回も役立つ情報をお届けしますのでお楽しみに!

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